パトリックメイエー

ロワール→パリ→ブルゴーニュと回り、
次はアルザスのクリスチャン・ビネーの所へ行く予定だったのだが、
その時お世話になっていたヴィニヴィッチヴィンチのニコラ・ヴティエ家の
最寄りの駅からアルザスまで300ユーロくらいの電車費用がかかる事が発覚。
高すぎてアルザス行きを断念仕しかけたが、
近日にフレデリック・コサールが主催するブルゴーニュのサロンに
ビネーが参加するので、
一緒にアルザスまで乗せてもらえる様にニコラが手配してくれました。

サロンが終わるとクリスチャンの車に乗っけてもらいアルザスへ移動。
ブルゴーニュを出てからしばらくして
「亮太、実は今週末用事があって家にいないから
 どっか他の所へ行ってこないか?」
急な提案すぎて焦りながら、
「可能なら面識もあるしパトリックのところへ行きたいです。」
とお願いしてみた、
「パトリックか~、来週から瓶詰めするって言ってたから難しいかもなー」
と言いながらも連絡してくれて、
二泊で行ける事になった。

ビネー宅から、まずはアルザス観光ということで、
エマのいるストラスブルグへ向かった。
エマの友達が集まり夜通し飲みまくり、
次の日メイエー家へ送ってもらった。

到着してすぐに試飲。
パトリックの説明は雰囲気が独特で、
自分の意見を主張しすぎず、相手にゆだねる感じだった。
感覚的にも感じるし理論的にも感じるし、魅力的な試飲だった。

それから彫る用のぼろぼろの樽をだしてもらい、彫刻を開始した。
パトリックは急に来た日本人が彫りだしたからか、
もの凄く驚きながらも喜んでくれた。
時間が無いから早く彫ろうと黙々と彫っていると、
パトリックが様子を見にきてこういった

「亮太! いい作品じゃないか!
 でも一つ問題が、
ここには沢山ワインがあるののになぜ何も飲まないんだ!」
と出してくれたのが、【クレマンダ08ドサージュブリュットゼロ】。

目の前ででゴルジュマンをして、グラスにそそいでくれた。
カプリアードで作っていたペティアンナチュールとは違い
澱引きの澱も少なく、
泡も落ち着いていて滑らかに喉を通っていく感じだった。
二時発酵用の糖は、
パトリックのぶどうジュースを足していると説明してくれた。

その夜パトリックの友達が集まり食事会があった、
アルザスの様式の家で郷土料理などを食べ、
地元のワインを飲みながらの大人な会だった。
料理でてくるジャガイモはメイエー家で作ったジャガイモでとても美味しい。
「ジャガイモはすぐに手に入るが、
いいジャガイモを手に入れるのは難しい。」
とパトリック言っていた。
食事会には絵描きの人や飲食の関係の人、
ヴァンナチュール関係のジャーナリストの方が来ていた。
ジャーナリストの人と話していると僕の事を面白がってくれて
新聞に載せてくれた。

次の日から瓶詰めが始まった。
【メール・エ・コキアージュ13】、リースリング13、ナチュール13の瓶詰めを
朝から夕方まで3日かけて手伝い。
2日だけの滞在予定だったが、
次に滞在予定のクリスチャンの都合もあって4日に延長し、
時間を見つけては樽も彫り続け、無事に完成した。

瓶詰めが終わった日、
パトリックの奥さんのミヘイルが
僕がクリスチャンの所でも彫らないといけない事に気を使ってくれて、
その夜にクリスチャンの家に送るように段取りをとっていてくれていた。
僕は泊まっていた二階の部屋で帰りの支度を始めた。

ダダダダ!
と階段を駆け上がる音と共にパトリックが僕の部屋に来てこう言った。
「亮太、樽を彫って、ずっと瓶詰めを手伝って、
 はいさようなら、じゃ普通じゃない。
 もし亮太さえ良ければ今夜みんなでレストランへ行かないか?」
めっちゃくちゃ嬉しかった。
パトリックの行きつけのレストランで
奥さんとスタッフの人と飲みながら沢山話せた。

次の日の朝パトリックはグランクリュ98のマグナムボトルに
「親友」的な意味のフランス語とサイン書いて僕にプレゼントしてくれた。
宝物だ。

パトリックの常に落ち着いて仕事を淡々とこなす姿や、
口数は多くないが、
いつも気にかけてくれる優しい人柄に触れたことがとても良い体験だった。
フランスで出会った人の中でもトップで尊敬できる人に会えた事が
とても嬉しかった。